日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

美術館で会った人だろ?

*「「補償金もDRMも必要ない」――音楽家 平沢進氏の提言 (1/4) - ITmedia NEWS
80年代前後のニュー・ウェーヴを通過した人間で平沢進を知らない奴はまずいないだろう。で、その平沢氏が最近の著作権関係の問題について、小寺信良氏のインタビューを受けております。
例えばこーゆう現状は、是非ともメジャーデビューを夢見るバンドの方々によく知っておいてもらいたいですわね。

普通我々一般人が思い描くアーティストとJASRACの関係は、アーティストがJASRAC著作権管理を委託していると思っている。だが実際にはその中間に、「音楽出版会社」というものが存在する。
アーティストはこの出版会社に、自分の権利を「譲渡」する。そしてその出版社が、JASRACに権利を委託する、という二重構造になっている。出版会社に権利を譲渡するのは、そうしておかないと「委託の委託」という、権利の又貸し状態になってしまうからだ。

平沢氏……例えばメジャーなレコード会社で活動してたとしますよね。レコーディングが終わるとある日突然、出版会社から契約書が届くんですよ。で、契約してくれと。契約条項にいろいろ書いてあるんですけど、契約書が送られて来た時点で、JASRACにもう勝手に登録されているんです。(中略)それによって、出版会社に権利が永久譲渡されている曲というのがあったりするんですよ。で、JASRACで集金されたお金は、この出版会社を通るだけで50%引かれて、アーティストへ戻るという構造があるんですね。出版会社は“プロモーションに努める”と言いますが、成果は保障せず、どんなプロモーションをするのか何度説明を求めても、回答しないことがほとんどです。大きなセールスが期待できるアーティストについては積極的に動きますが。

――通過するだけで50%天引きはすごい話ですが、この音楽出版会社というのは自分では選べないんですか?

平沢氏……ここが最近巧妙になってまして、レコード会社の中に出版会社ができているんですよ。ですからレコード会社の資金で使った楽曲は、そこの出版社に登録されて当たり前のような構造ができています。そこで私がおそらくミュージシャンで始めて主張したと思うんですが、なぜ私の権利が私の選んだ出版会社と契約できないんですかと、一回ゴネたことあるんですよ。ところがここの出版会社の言い分は、制作費を回収するためだというんです。
これは一見まともな理屈に聞こえるが、実は違う。レコード会社が制作費を支払った対価として得るのは、著作隣接権に含まれる、原盤権である。著作権料は著作権者個人に支払われる対価であるが、音楽出版社はこの著作権を譲渡するように求めてくるわけだ。
そうなるとJASRACが回収した著作権料は、権利を譲渡されて保持している出版会社が貰うことになる。アーティストには出版会社から、印税という形でお金を受け取る。50%天引きでだ。
つまりレコード会社と出版会社のタッグは、原盤権も手に入れた上で著作権までもゲットし、その著作権料で制作費まで回収し、回収が終わっても曲が売れ続ける限り、著作権料としての利益を上げ続けることになる。

すさまじい……しかし物を知らんというだけでさぁ、ここまで搾取していいもんだろうか。
で、ご存知のとおり自ら音楽配信をするようになった平沢氏ですが、最近のDRM関係について、すげえ納得出来る発言をしてます。

――ご自分で音楽配信ビジネスを立ち上げた立場として、今の巨大音楽ダウンロードサービスをどうご覧になりますか?
平沢氏……現実として私がやっているように、すでにミュージシャン自身が制作・流通・決済が個人で可能なわけですよね。そういう状況の中で、一つの大手が沢山の楽曲を収集して陳列台に並べるということにどれだけ意味があるのか、ということなんですけども。反対に自分の楽曲を常に自分の管理下に置いて、どのようにお客さんが来ているのかを自分でモニターしながら活動を続けていくことと、最終的にどっちがアーティストにとって利益が大きいのか。ミュージシャンとしてマスに支持されることよりも、音楽をやることの動機のほうが勝っている人にとっては、そういうマーケットは向かないですよね。
――しかし人が集まれば、プロモーション的には有利ではないかと思うんですが。
平沢氏……それすら配信のテクニックや、インターネット上でのプロモーションでの仕方次第だと思うんですよ。音楽というのは聴いてみないとわからないじゃないですか。聴いてみて良かったらお金を払ってくれればいいと。半分そういう気持ちがありますね。昔「Grateful Dead」というバンドがありまして、音源はコピーフリー、それで良かったらコンサートに来てね、という姿勢もあるわけです。
(中略)
メジャーレーベルを辞めて自分で配信するようになってからは、作品の売れ行きは伸びて、マーケットも広がってます。無料のMP3配信を監視していると、ダウンロードが24時間止まらないんです。そうしているうちに、次は世界中からCDの注文が入ってくる。そう考えると、無料で音楽を配信すること、コピープロテクトをかけないことは、プロモーションにつながるんです。これはものすごい威力ですよ。お金を払ってまで欲しいと思ってくれなければ、やってる意味がない。違法コピーしてそれで満足してしまうようなものであれば、それは自分のせいだと。作品がその程度のものでしかないと判断する姿勢を、今のところ持っています。
――つまり音楽配信においても、DRMなど必要ないのだと。
平沢氏……必要を感じてないですね。つまり私は音楽がデジタルコンテンツ化以前と今とでは、さほど変わりはないと思っているわけですね。昔はカセットでコピーして友達同士でやりとりしていたし、オンエアされたものをエアチェックしてコピーしていたわけですよね。それがデジタルコンテンツになったところで、何を騒ぐんだということですよ。不思議に思うのは、客を泥棒扱いして、オマエが泥棒ではないということを証明するために補償金を払えと、言ってるわけですよね。これ自体私には理解できません。プロテクトや補償金の話はビジネスの問題であって、コピーするしないは倫理の問題じゃないですか。彼らは倫理を大儀にして、ビジネスしているだけなんですよ。

音源配信にまで携われば、インターネットのある今ならマーケットを世界規模で考える事も出来る。平沢氏の作る音楽のようなインスト系ならそのまま云えるだろうけど、言葉と云う壁を超えるのはなかなか難しいだろうとは思う。歌ものを含めて、世界各地の音楽を楽しめる環境は、実は日本が一番進んでいると云われてるからね。海外のリスナーに日本語のはいった音楽がそのまま楽しめるかと云うと、なかなか難しい事はあるかも知れない。
そーゆー各論的な温度差はあるけれど、平沢氏の発言は原則的に正しいと思いますよええ。
それでもやっぱり、時間が流れないと、駄目なんだろうな……頑張ってくれ若者。おじさん怒るのにさえ最近疲れが先に来てしまいます……