日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

PS3がSACD対応だってぇ?!

hirofmix2005-05-17

*slashdot.jp「E3にてPlayStation3正式発表」
*ITmediaニュース「PLAYSTATION3は2006年春に登場」
いやそもそもSACDSuper Audio CD)はCD同様ソニーとフィリップスの共同開発で生まれた音楽メディアなのだから、今回のSACD対応はそれほど驚くに値しないのかも知れないし、この事がPS2発表後のDVD普及のように、SACD普及の起爆剤になればかなり素晴らしい事ではあるのだけど…
小生もCDプレーヤーをSACD再生可能なマランツSA8400に変えてから、しこしことSACDを買い集めているのだけど、多くの人がSACDの音の良さを<一発で>理解出来るかというと、かなり微妙なのではないかという気がしているのだ。
レコードからCDにメディアが変わる時の売り文句は「音がいい」で、それを具体的に云えば「ヒスノイズが発生しない」っていう事だった。レコード針が否応なく拾う“プチプチ”っていう雑音=ヒスノイズが聞えなかった時には「おおさすがはCD!」と感動したものである。従って単純に「音がいいなぁ!」と思いもした。
この「ヒスノイズが発生しない」というのは、今までずっとレコードを聞いてきた一般消費者にとって、CD乗り換えの大きなアドバンテージ足りえたと思う。一部オーディオファンを除けば「CDは音がいい!」という了解が出来て、それまでのレコードを駆逐して現状のようになった。
この時のようなアドバンテージ、もっと細かく云うと<わかりやすい>アドバンテージSACDにあるかと云えば、現状ではかなり微妙ではないかと思うのだ。
CDが人の耳に届かない音をはしょってデジタル処理するPCM方式であるのに比べ、SACDが採用しているのは、人の耳の可聴域を超えた音をも録音出来るDSD方式である。その方式の違いを比較して僕なりに言うと、音楽ソースの「空気感が伝わってくる」というリアリティである。特にクラシックやジャズといった生楽器・生音の演奏を録音したアルバム→音楽ソースでCDと聴き比べると、その楽器の位置や配置の奥行きといった現場のリアリティ、実体・実在感がかなり感じとる事が出来る。
ただそのリアリティを十全に再生するには、現段階では、それ相応の再生システムが求められる気がしてならない。いやまだSACD再生可能なラヂカセやミニコンポっていうのが存在しない以上(最近の5.1ch再生のAVアンプにはわりと採用されている)そういう事はまだ云いづらいのだけど、そのリアリティ、SACDならではの音の良さが、CD普及の際の「ヒスノイズが発生しない」という<わかりやすい>アドバンテージのように一般消費者に届くかどうかという点には、今段階では正直悲観的にならざるをえない。
またここがかなり微妙な点なのだけど、録音フォーマット(PCM、DSD)の違いによる音の良さが、そのまま聴き手の音の良し悪しに直結するかというと、これまた微妙なのだ。
一般消費者にとって「音がいい」というのは、多分「低音が響いて高音が伸びる」という言葉に置き換えられると思うのだけど、例えば低音再生での「いい音」→太い低音という図式から想像すれば、SACDの出す低音というのはCDに比べて決して太い音になる訳じゃない。また採用期間の長さからいってCD→PCMでの録音技術はDSDに比べて高いためなのか、各オーディオ雑誌を読んでいる限りだと、音のメリハリという意味ではCDの方に分があると聞く。何せ現段階のCD/SACDフルサポートの高額プレーヤー(100万円台から1,000万円台近くもする)で聴き比べても「CDの音の方が(気持ち)いい」と感想を宣うオーディオ評論家は少なくないからだ。
加えて生楽器・生音で聞かせる音楽ジャンルがメインストリームの音楽状況において少ない中で、DSDならではの音の良さがどこまで理解されるのか。下手したら「思ったよりいい音しないじゃない、SACDって?」という評価にならないだろうか、という気もするのである。


それでもいわゆるコンシューマー機器でSACDがサポートされるのはやっぱり嬉しい。この事でSACDの良さが多くの人に理解されるようになればいいと思う。だから問題とすべきはそのプレゼンテーションの方法、その「音の良さ」をどうわかりやすくアピールしていくかだ。余談ではあるがSACDはDVD以上にコピーが困難なプロテクトがかかっているのだから、一般消費者にSACDの「音の良さ」を理解してもらわないと、そのためのバーターと考えたっていい「コピープロテクト」の方にさえいちゃもんをつけられかねないと思うのだ(だからレコード会社の皆さん、是非ともSACDを出す時はCDプレーヤーでも聴けるハイブリッド仕様で出して下さい。それだとおいらのiPodにもコピー出来るから……これ止めちゃったら、SACDはおろかCDでさえ売上伸びないよ本当に)。
オーディオ評論家の菅野沖彦御大に「CDというデジタルメディアに移行するのなら、この(SACD)程度の音の良さを実現してからにしてほしかった…」と云わしめたDSD方式→SACDなのだから(現在のところ最新号である「季刊STEREO SOUND」は全面的にSACDをクローズアップして後方支援している)、その期待は大きいのだよ、ソニーの皆さん。頑張ってね。