山本一郎という人は
近頃とんと雑誌は買わなくなったかわりに津田大介氏や山本一郎氏のメルマガを楽しく読んでいる私。などと体言止めを多用するのは文章の品位を落とすので控えるべきだと何度言ったらわかるのか。さてそこで山本一郎氏である。最近はイケダハヤト氏とのイベントだか何だか、傍から見るとイケダ氏に分の悪いこれまでの経緯が山本氏のブログで紹介されているのだが、そこはそれいつもの「罵倒芸」とともに表現されるため、ぱっと見だと含意を読み落とすかも知れない。氏がどれだけ意を尽くして文章を書いているか、ちゃんと読めば誰にでも読み取れるはずである。ブログ以外でも4Gamerの不定期連載「茹で蛙たちの最後の晩餐」のひとつ「リトアニアから愛を込めて。『アーセナル オブ デモクラシー』で、悲哀の小国を何とかしてみようと思ったら、こうなった」を最近読んだが、こちらもその筆運びに乗せられ爆笑してしまった。上手いなぁ山本一郎氏は。
この人頭がいいんだな、と思わせるエピソードがある。最近の山本氏のメルマガに、こんな一文があった。イケダハヤト氏との、ブログやらツイッターを通じての一連のやり取りを評して、彼はこう宣う。
一方、私はというと、単純にパソコン通信時代にこの手の炎上や論争、バトルといったものは数多く経験してきました。何というか、懐かしくて、楽しいわけですね。相手はこう主張してくるだろう、その主張内容から「ここは反論する」「ここは揶揄する」「ここは触らない」「ここは同意したりして一歩退く」みたいなラリーを構築するのがとても楽しい。たぶん、読んでいる人には分からない部分だと思いますので多くは書きませんが、これはこれで大変趣味として面白いのです。
この毒にも薬にもならない論争というのは、第三者には価値がないけれども、楽しいんですよ。
こうなると、棋士と小学生との将棋みたいなものだ。棋士側(山本氏)にとっては、全力で向かってくる小学生の一指し一指しの意味も意図もすべて見えてしまう。なるほどそれは「何というか、懐かしくて、楽しいわけですね」。それほどに頭の回転が速く、またその知性にも飽いているニュアンスを氏の文面から垣間見ると、こういう趣味を持つようになった山本氏の背景、心持ちを想像してしまって、やや暗然としない訳でもない。ご結婚されて本当に良かったと思います。正直羨ましい。