日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

11月14日・置戸町公民館・村治佳織コンサート

久しぶりに村治佳織のコンサートを聴きに行った。こっちから会場の置戸までは遠軽経由で1時間少しかかる。通常通り仕事を済ませてからだと、ちょっと余裕のないスケジュールになるのだが、この日のコンサートにあわせて代休をいただいたので、遠軽で飯を喰ってからでも焦らずに会場まで行けた。会場までの一車線の国道、前を走る車がみなコンサート会場へ向かっていたのにはおたがい苦笑した。
サイン会があるだろうと前もってCDを購入してから会場に入ると、コンサートから結婚式までまかなえる、いわゆる多目的ホール型の会場で、ステージの天井部にだけ反響板がしつらえてある不思議な絵面だった。フラットな場内には300近くのパイプ椅子が並べられ、すでに7割近くの席が埋まっていた。
棒読みな場内アナウンスのあと(場内アナウンスって大事だよな)、微妙な間合いをおいて村治が登場すると、満場の客席から拍手がわく。しかしまぁチラシの顔写真といいその笑顔といい、村治の美しさは今がピークなんじゃないかと思わせるものがある。カリスマという風情ではないが、彼女のスター性によってクラシックファン、音楽ファンが増えるのであればそれに越したことはない。
この日のコンサートは新しいアルバムにあわせてバッハの曲が多く、個人的にもかなり楽しめるプログラムだった。やはりライブは良い。特にギターの場合、こちらが手慰み程度にギターが弾けるせいもあって、どういう弾き方で色々な音色が出せるのかがすぐさま目で確認出来て面白かった。俺は他のクラシック・ギタリストをよく知らないので村治の演奏について特徴とか書くことは出来ないけれど、弱音の弾き方に特徴がある気がした。
しかし6,7年近く昔のこと、うちの町で村治がコンサートを開いた時には「アルハンブラの思い出」も「禁じられた遊び」も弾かなかった(アンコールでさえも)。今ではどちらの曲も恥じらうことなく村治は演奏する。日本で無名の南米作曲家の作品を演奏し続けたありし日の村治を思い出すと、その流れた時の長さ、その積み重ねに感慨を抱かざるを得ない。
ちなみにコンサート終了後にサインをもらったCDはこれ。

Kaori Muraji Plays Bach(限定盤)

Kaori Muraji Plays Bach(限定盤)

村治のアルバムはデッカに移籍してからしか持っていないのだが、今回のアルバムは今までのと比べてレベルがひとつ上がったんじゃないかと思わされる内容だった。今回村治はライプツィッヒのゲヴァントハウス・バッハ・オーケストラと共演しているのだけど、このオーケストラの演奏が素晴しい。最初の音が出た瞬間に「ああ、これだ」という有無を言わさぬ説得力があった。どんなジャンルの音楽であれクオリティが高い演奏は、その一音を聞いた途端に「これしかない」と思わせるものだが、そんな印象を、ワールドワイドに活動する村治のアルバムから初めて感じ取ったのは大きな喜びだった。これは良いアルバムです。名曲「G線上のアリア」「主よ、人の望みの喜びよ」も収録されていますしね。