日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

ジョン・クーガー・メレンキャンプ!

*「ジョン・メレンキャンプの新曲『ジェナ』 - 映画評論家町山智浩アメリカ日記

この歌は、去年の夏から続いているルイジアナの小さな町ジェナの人種対立を告発した歌。

ジェナ市立高校の校庭の「白人専用の樹」からNoose(縛り首のロープ)がぶら下げられた。それは「白人の領域を侵す黒人はリンチするぞ」というKKK式の脅しだった。

それによって人種対立がはじまり、一人の白人少年が黒人生徒6人に暴行される事件が起こった。

被害者の白人少年は脳震盪を起したが、その日のうちに退院し、後遺症もなかった。しかし、加害者の黒人少年たちは「謀殺未遂罪」で有罪になった。最高で22年の刑だ。有罪を評決した陪審員は全員白人だった。
 ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記」より引用

たぶん今、こういった音楽を歌わなくてはならないのは、彼だろう。彼しか、いない。邦盤ではすでにベスト盤しか市場に出ていないかも知れないが、ジョン・クーガー・メレンキャンプが今でも大切な存在であるは、こういう音楽を肩ひじ張る事なくアメリカ南部の人間として歌えることだと思う。彼のベストといっていい「Scarecrow」は、もともと80年代のアメリカ農村部の崩壊を背景にもったアルバムで、同時代、アメリカに対する怒りでさえも国際的な問題として歌わざるを得なかったろうブルース・スプリングティーンが、アメリカの暗部といったものを抽象的に扱わざるを得ない立ち位置であったろうところを、ジョン・クーガー・メレンキャンプだけが、よりアメリカ人に具体的な(具体的すぎる)「農村」「南部」「故郷」といった手ざわりの中でアメリカを歌いえたロック・ミュージシャンだったと思う。そういう彼だからこそ、今回の事件を歌うべくして歌ったのだろうと考える。

全員白人の陪審員たちは死刑執行人の顔を隠している 僕たちはどうだ? 僕や君は?
みんな、あの町のことを知る必要がある
あの黒い鳥を煙突に隠そう
おお、ジェナ おお、ジェナ おお、ジェナ
その縛り首のロープを降ろすんだ


「タチの悪いガキどもをどうしてくれよう 特に茶色い紙袋みたいな肌をした連中を
 イエス、サー ノー、サー
 俺たちはお前の顔からその笑顔を消してやるぞ
 この町にはこの町の掟がある それに従ってもらうぞ」
おお、ジェナ おお、ジェナ おお、ジェナ
縛り首のロープを降ろすんだ


いつか道理が通る日が来るだろう
でも、それはいったい、いつなんだ?

「Scarecrow」というアルバムは本当に良質なアルバムで、ここではっきりと言わせてもらうが捨て曲など一切ない。ギター、ドラム、ベース+キーボードという最小編成のバンドがはじき出す各楽器の音の分離がよく、ある意味すかすかとも言えるかもしれないが、特に高音の抜けの良さなんかはやはり一聴していただきたい。青年から成人への入口、すでに初老の自分が意識の射程内に浮かび上がった頃に聴くと味わいもひとしおである。