「認識のショック」としての「ロック」
ダンスミュージックや店内のBGMでしかなかった、生活を彩る音楽でしかなかったジャズやロックが、それぞれの独自性を展開していったのは、数限りないそれぞれの時代のミュージシャン達が自らの音楽をその先へ、その先へ、今まだ鳴らされた事のない音を求めて活動を続けてきた成果である。そして、その新しい音を聴いたリスナー(もちろんその中にはミュージシャンも含まれる)は、ただ音楽として素晴らしいという感動と、今までのものの考え方が改められるような「認識のショック」を与えられただろう。
ロックにとってその世界的なシフトを果たしたアイコンは、やはりビートルズだと俺は思っている。彼らこそ、誰もが予想していたロックの音ではない音を鳴らし、しかしやはりこれはロックなのだとその音でリスナーを説得してしまったのだ。そしてロックは、どこかでこの「認識のショック」を目指して歴史を積み上げて来たのだと俺は考えている。少なくとも俺はそういった音をこそ「ロック」だと認識している。*1
けれども「認識のショック」としての「ロック」は、ジャンルミュージックとしてのロックという枠内を越えていこうとする。何故なら「ロック」が求めているのは“今ここにはない音”なのだから。「ロック」バンドはそれぞれ自分たちの歴史を足がかりに聞こえない音を今ここに鳴らそうともがき続けなくてはならない。
Blurというバンドもまた、俺にとっては「認識のショック」を音で得ようとしたバンドだと思っていたから、彼らがオルタナへその音を変えていったのは必然だったと思っている。個人的に言えばBlurのベストは今も「MODERN LIFE IS RUBBISH」なのだが、このアルバムはブリッドポップというジャンルを語る上で絶対にはずせない音の集まりである。アルバム冒頭の"For tomorrow""Advert"と続くその音から受けたショックは今も鮮やかだし、その感動はやはり俺にとって「認識のショック」であった。しかしBlurはこの音をいつまでも再生産するようなバンドではなかった。ポップとロックの配合で言えばBlurはやはり「ロック」の比重が重く、だから当時絶頂のブリッドポップから「Blur」でシフトしたのを俺は当然のこととして評価していた。*2そしてバンドの停滞とフロントマンのデーモンのゴリラズへの参加もまた、必然だったと思うのだ。
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*1:あと多分キング・クリムゾンの「クリムゾン・キングの宮殿」も