日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

根雪よ、僕たちをめくらますその時の速さよ


彼は目を閉じて 枯れた芝生の匂い 深く吸った
長いリーグ戦 しめくくるキックは ゴールをそれた
肩を落として 土をはらった
ゆるやかな 2月の黄昏に
彼はもう二度と かぐことのない風 深く吸った
何をゴールに決めて 何を犠牲にしたの 誰も知らず
歓声よりも長く 興奮よりも速く
走ろうとしていたあなたを 少しでもわかりたいから
人々がみんな立ち去っても私 ここにいるわ
同じゼッケン 誰かがつけて
また次のシーズンを かけてゆく
人々がみんなあなたを忘れても ここにいるわ
何をゴールに決めて 何を犠牲にしたの 誰も知らず
歓声よりも長く 興奮よりも速く
走ろうとしていたあなたを 少しでもわかりたいから…
麗美ノーサイド』作詞作曲:松任谷由美 編曲:松任谷正隆

青春のリグレット」もこの「ノーサイド」も、麗美を愛した松任谷由実の曲である。彼女の歌のほとんどがそうであるように、ここに描かれているのもまた、過ぎ去ろうとする季節と、その後ろ姿を見るまなざしである。今ここにあるものが失われ、次の季節に変わっていくことを、誰も止めておくことは出来ない。そんな当たり前のことの重荷を知れば知るほど、過去は今よりももっと輝きを帯び、歌は眠れぬ孤独にそっと毛布をかけていく。根雪よ、ぼくたちをめくらます時の速さよ。などと清水邦夫じみた文章を書くのは書く当人としては気持ちいいが、読む側にすればナンノコッチャである。朝からメランコリじみているのは、疲れている証拠かしら。
 で、同じ松任谷由実の曲で、ぼくもその大仰なアレンジで大好きな「翳りゆく部屋」を、あのエレカシが歌っている映像を見つけてしまった。最初は正直どうかなと思っていたけどだんだんと引きづりこまれ、最後の最後に歌う「どんな運命が愛を遠ざけたの」に何もかもがすべて持っていかれて涙で前が見えない。今さらながら宮本の声は「ズルい」と思う。過ぎていった者達を思い出して、泣きなさい。