日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

ささやかなデマ

 *韓国でシェア1位の「ファミリーマート」が街から消えた 「もう日本にはお世話にならなくてもいい」
 この2chまとめサイトの元になったニュースソースはMSNニュースの「【外信コラム】ソウルからヨボセヨ」の10月27日の記事「ファミマが街から消えた」である。
 この段階で“まともに取りあう方が間違えている”という冷静な判断が出来ない私……ではない。産経は何があっても韓国を褒めないのがデフォなんだから。記事を全文紹介する。

 韓国でもコンビニが相当増えている。日本式商法でお握りや弁当も定着化し客層も広がっているが、日本のような何でもありの生活密着型にはまだなっていない。韓国のコンビニは1989年5月のセブン−イレブンが第1号店だったが、そのビジネスは圧倒的に日本の影響下にあった。
 その後、国産系も登場し内外入り乱れて乱戦を展開。結果的に日本系のファミリーマートがシェア1位となり、次いで国産系のGS25、セブン−イレブンと続き、このビッグ3でだいたい落ち着いていた。
 ところが最近、トップのファミリーマートが突然(?)、街から姿を消した。あのおなじみの看板がまったく見えなくなった。いや、店の名前が「CU」に変わり、看板のカラーも紫になってしまったのだ。
 聞くと日本のファミリーマート伊藤忠系)と合弁の韓国・普光グループが「もう日本にはお世話にならなくてもいい」と宣言し、独自の店名とカラーに変えてしまったというわけだ。
 独立に際し韓国側が「韓国のナンバーワンが日本のナンバースリーに学ぶことはない!」と言ったとか、ビジネスマンの間で話題になっている。今後も日本のコンビニ文化をせっせと参考にするに違いないが、韓国企業の“日本隠し”は昔からよくある。(黒田勝弘

 ああもう本当にこういうヨタ記事にいちいち駄文を弄する自分が悲しくなってくる。ヨタと知りつつあげつらってお前リベラル気取りかと。しかしまぁこういう“愛国者たちのやり方”を知らないヒロクロ読者にいるかも知れない……と、かそけき希望を虚構しつつ話を続ける。
 今年8月10日に李明博韓国大統領が竹島に上陸して以降、日本と韓国は今まで以上に非友好的な状態が続いているのはご存知の通りである。そんな中でこういうコラムで上のような記事が出ると、早わかりしたい人達は「ああこんなところにまで韓国の日本嫌いが進んでいるのか…」と何となく思うだろう。しかしこの記事にもある韓国・普光グループの独自展開は竹島上陸前の今年6月に発表されたことである。朝鮮日報のWeb版6月19日の記事から冒頭3段を引用する。

 BGFリテール(旧普光ファミリーマート)の洪錫肇(ホン・ソクチョ)会長が2007年3月の就任後5年3カ月ぶりに初めて公開の席上に姿を見せた。「ブランド変更」のカードを持ってだ。日本のブランドの「ファミリーマート」の代わりに自社ブランドを育成し世界市場に出て行くという目標だ。
 洪会長は18日にソウル市内のホテルで記者懇談会を行い、「ファミリーマートという名前を今年8月から『CU』に変える」と明らかにした。また、「日本のコンビニエンスストアの模倣から脱却し21世紀の韓国型コンビニに能動的進化をする」と付け加えた。
 ファミリーマートが名前を変えるのは1990年にソウル・可楽洞(カラクドン)に1号店をオープンして以来22年ぶりだ。新名称「CU」は「あなたのためのコンビニ(CVS for You)」という意味だ。10月までに全国7200店舗に新しい看板を掲げることにした。同社はこれに先立ち7日に株主総会を開き社名をBGFリテールに変更した。
 *韓国ファミリーマートが韓国型コンビニ「CU」に名称変更(1)

 このことはファミリーマートのニュースリリースでも6月18日に正式発表されている。そしてこれらの動きについては経済誌週刊ダイヤモンド」Web版で7月4日に「韓国ファミリーマート離反か 全店の看板掛け替えへ」として解説記事が出ている。

 ファミリーマートの韓国のエリアフランチャイザー(FC)が離反とも取れる動きを見せている。
 6月初旬の株主総会で社名を普光ファミリーマートからBGFリテールに変更、8月からは店名も「ファミリーマート」から「CU」に変え、7200店強に及ぶ全店の看板を掛け替えるというのだ。
 ファミリーマートの海外店舗約1万1700店の6割強を占める韓国は、同社の海外進出における最大の成功事例。LGグループ系の「GS25」、ロッテ系のコリアセブンが展開する「セブン−イレブン」(米国セブン−イレブンとライセンス契約)を含む3強でシェア8割を占めるといわれる韓国コンビニエンスストア業界にあっても、店舗数でライバル2社を圧倒している。
ファミリーマート」から「CU」へのブランド変更を発表した韓国BGFリテールは、世界市場への進出もほのめかす
 韓国で記者会見したBGFの洪錫肇(ホン・ソクチョ)会長は、ブランド変更の目的を「世界市場に出ていくため」と説明したという。
 そうだとすれば、アジアでの出店をてこに全世界での店舗数を現在の約2倍の4万店に増やそうと計画しているファミリーマートと真っ向からぶつかることになる。
 だが、ファミリーマート側に話を聞くと様相がかなり異なる。確かにブランドは「CU」に変わるが、看板には「with FamilyMart」と付記する。さらに、現在23%強となっているBGFへの出資比率を、この夏をめどに引き上げる新たな包括提携を結んだ。BGFから一定のロイヤルティを得る契約にも大きな変更はないという。それが事実なら、出資比率に応じて連結決算に取り込める持ち分法利益はむしろ高まる可能性があるし、今まで通りロイヤルティ収入も得られる。ファミリーマートにとっては何の不都合もない。
 とはいえ、出資比率をどれだけ引き上げるかはまだ決まっておらず、仮にBGFが「CU」ブランドで韓国以外にも出店するとなると「具体的な計画があるとは聞いていないが、仮にそうなったらあらためて協議する必要がある」(ファミリーマート)としている。
 どうも、そろそろ独り立ちしたいBGFと、そうはさせたくないファミリーマートという構図が透けて見える。

 ようするに企業間でのつなひきであり、日本だ韓国だといった話ではない。そこで先のコラムに戻ると、まず「ところが最近、トップのファミリーマートが突然(?)、街から姿を消した」というつかみが上手すぎる。大体この文章での(?)は何を意味するのだ。突然なら突然と言いきればいいじゃないか。続いての文章「聞くと日本のファミリーマート伊藤忠系)と合弁の韓国・普光グループが『もう日本にはお世話にならなくてもいい』と宣言し」という表現も、書き手としては「いやこれは「日本の企業」に、ようするにファミリーマートって意味ですよ」と防御出来ないことはない。出来ないけど。後半の「と言ったとか」っていうのも飛ばし記事でおなじみのクリシェ(常套句)である。
 もちろんこういう“ささやかなデマ”は、今回遡上にあげた産経に限らず左右どちらにもあるし、同じようなことは韓国にだってある。そういった諦観をまたしても抱きしめる日曜の午後……になってしまった。