日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

雑木林

家を建てたいと思った事がほとんどない。オーディオに手を出す前は、本当にこれっぽっちも想像した事がなかった。だいたい、家を維持管理することなど、どう考えても自分の手に余る(自分の部屋ひとつ満足にキレイに出来ないのに)。仮に家を建てるとなると当然借金、という事になるだろうが、そんな莫大な借金で残り少ないサラリーマン人生をこれ以上灰色にしたくはない。もう真っ黒じゃないかそれじゃあ。
それでも自分が建てる家を想像した時に、いつもその周囲は、雑木林に囲まれている。雑木林に囲まれた、一人暮らし用の小さな家。暖房は薪ストーブだったりする訳だが、あまりに現実を直視しない想像を妄想という。想像と妄想の区別ぐらいは出来るので、家の想像は想像のまま小洒落た雑誌なんかにまかせておいて、気持ちは雑木林の方へ傾斜していく。


この町から紋別へ行く時、丁度右手側に見える畑の中に、ぽつんと雑木林が見える。行ってみたいなあ…と思うのだけど、まだ果たしていない。仮にも人の土地だろうから、その雑木林に入っても、あまり安心できないような気がするからだ。訪ねる事も出来ないまま、もうすぐの町での何度目かの冬が来る。
雑木林の中を歩いて、鳥の声なんかに耳をすましてみたい。その静寂の中に身をおいて、風の音を感じたい。草の上を歩く音、枯葉を踏む音を味わいながら、おだやかな静寂を感じとりたい。田舎にいるくせに、ひどく忙しない生き方をしているのは、いったいどうした訳だ。


日常と非日常の境界の間に、2Bの鉛筆で囲みを描いて、そこを雑木林とする。