日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

「癒し」というのじゃないけれど

美しきボサノヴァのミューズ

美しきボサノヴァのミューズ

精神的にか肉体的にか(あるいはそのどちらも)疲れている時に手を延ばすCDが、このナラ・レオンのアルバムである。いま、部屋に彼女の歌が流れています。何がいったい、疲れていると云うのか。
1971年に、彼女の亡命先だったパリで録音されたというこのアルバムに収められたほとんどが、彼女の歌とギターの伴奏というシンプルな曲ばかりである。静かに、語りかけるようなその歌声には、ボサノヴァという言葉に連想される明るさはない。もちろん「イパネマの娘」「コルコヴァード」といった名曲もあって、そこにはボサノヴァらしい自然でシンプルな明るさもあるのだが、このアルバム全体から連想するのは暗い夜の闇と静寂である。特に冒頭一曲目「ポル・トーダ・ア・ミーニャ・ヴィーダ(一生かけて)」に収められた、彼女が唄う低音の震えには、愛する女性への愛を歌う男性の、その情熱の“暗さ”が秘められているようで、疲れてこのCDに手を伸ばす度に思い出し、CDトレイに乗せずに終ると云う事もある。
元々二枚組LPだったというこのアルバムは、今もまだ部屋の中に流れている。


ところでブラジルでは、手紙の末尾にこう書き添える習慣がある。
「あなたに美味しいコーヒーを!」
“あなたの幸運を祈る”という意味だと云う。どうぞどなたか恋しい人にでも手紙を送る機会に使っていただきたい*1

*1:ちなみにブラジル人に手紙を送る際は、ブラジルにそんな習慣はないので注意されたい。