"More than this"
- 作者: 法月綸太郎
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2004/09
- メディア: 単行本
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これ以上の完成度はありえない、と思わせるほどにこの作品には隙がない。いや、今すこし冷静になって思い起こせば、ひとつひとつの瑕瑾をあげることはできるのだが、そんな言葉をねじ伏せる力がこの作品にはある。これだけ隙がないと、読者はもしかしたら、作品に感情移入ができないかもしれない。
よくミステリ作品を評するのに、そのトリックと、トリックを納得させるだけのリアリティ、その整合性が語られるけれども、そういった評論がそもそもしゃらくさいと思わせるだけの強靱さが、この作品には漲っている。
僕が読んだ今までの法月綸太郎作品中で、一番ソリッドな文章で書かれた作品だと思う。冒頭から最後までこの文章で書きつづけ、いくつものトリックを用意し、現実世界との着地点を見出していった作者の作業を考えると、ため息が出てくる。
誰にでも勧める気持ちはないが、読んで損はないと断言させてもらう。