日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

はてなダイアリーが選ぶ名盤百選 by hirofmix

id:itoh さんよりご指名いただきまた(ありがとうありがとう)。で、ベタだ何だと思われるセレクトと思うでしょうが、やはりこの1枚を。
The BEATLES "Abbey Road"

Abbey Road

Abbey Road

ビートルズの掉尾を飾るにふさわしい、彼らのラストアルバムである。
このアルバムが作られた1969年は、ジョンとリンゴが29歳、ポールは27歳、ジョージが26歳となった年だ。“円熟”という表現がぴったりと来るこのアルバムが、まだ20代の男達によって作られたという事実に、私は驚きを禁じえない。すぐれたバンドは、それが優れたバンドであればこそ、ひとつの“存在”になる。そしてこの時ビートルズという存在は、彼等個々の実年齢を越えて、すでに老齢といってもいい境地に達していたのだ。リバプールで産声を上げたビートルズは、彼なりのロックンロールの進化の道を歩みながら、彼の第二の故郷ともいうべきレコーディングスタジオの名を冠するアルバムとともに、息を引き取った。
アルバムがシングル曲の寄せ集め程度の意味しかなかった60年代当時、ビートルズはアルバム「ラバーソウル」以降(「ビートルズ・フォー・セール」以降といっていい)、アルバムを聴くことが個々の曲をまとめて聴くだけでなく、ひとつの体験となるような統一感、トータリティを与えてきた。今では当たり前のことだが、この「アビー・ロード」はそのアルバム作りにおいても、ビートルズとしての到達点である。それは名盤の誉れ高いアルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」と聴き比べるとよくわかる。「サージェント…」は“コンセプト・アルバム”などとも評され、そのトータリティーの高さは今更云うまでもないのだが、逆に個々の楽曲の音自体はどれも似ており、その意味ではバラエティに欠けている。しかし「アビー・ロード」の素晴らしさは、個々の楽曲がバラエティに富ながらも、1曲目から最後まで、張りつめた一本の線を思わせる見事なまでの統一感があることだ。それはもうひとつの“世界”といっていい。どの楽曲もあるべくしてある、という事をひしひしと感じられるだろう。

もし神様があらわれて「ビートルズのアルバムを一枚選びなさい」と云われたら、やはりこのアルバムを選ぶしかないと思う。
勿論、畳敷き四畳半の部屋で、ひとりビートルズのアルバム「ミート・ザ・ビートルズ」の一曲「Twist and shout」を歌いながら(というか叫びながら)踊った14歳の夏を忘れることは絶対に出来ない。私の音楽遍歴はそこから始まったのだ。私は歌い、ギターをかき鳴らし、親に泣きついてヘフナーモデルのベースを買い、ピアノを憶え、雑誌「Recording Magazine」を買い、作詞作曲やアレンジに手を染め、世界の音楽に耳を傾け、音楽センスを磨き続けることを自らに課し……音楽への扉を開いてくれたのは間違いなくビートルズの、それも、あの人を走らせずにはいられないジョンのボーカル、ジョンのシャウトからなのだ。
その意味からいえば、この「アビー・ロード」にはその熱狂がないと云える。永遠のテディ・ボーイとも云うべきジョンがそれほどこのアルバムを評価していないというのも、わかる気がする。
大体「アビー・ロード」というアルバムは、ビートルズをある程度聴き続けていないとその良さがわからないとも云えるのだ。ビートルズファン初心者がこのアルバムを聴いても、その良さは十全に理解出来ないと思う。それは、ビートルズの歴史を知らないからだ。このアルバムの背後にあるビートルズの曲を聴いていてこそ、その真価がわかるというアルバムなのだ。だからという訳ではないが、このアルバムを聴くたびに色々な発見がある。特にここ最近、私はリンゴのドラムの素晴らしさを、このアルバムに入っている名曲「Something」におけるドラミングから発見した。

アルバム後半に収められた二曲「Carry that weight」「The End」の短い歌詞が、ビートルズ最後のメッセージと言えるだろう。
"Boy, you're going to carry that weight, carry that weight a long time."
"And in the end, the love that you take is equal to the love you make. You make your love."
「君はその重い荷物をずっと背負い続けていくんだ」
「結局、君が奪う愛は君が生みだす愛と同じなんだ。愛は君自身が作るもの」

上手く書けないもんだまったく。ではお次はid:erinjiさんにお願いしますです…どうぞ!