日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

あのひとに届くだろうか

  • 加藤:原発問題も、推進か反対かの神学論争になってしまっていましたが、そして今も残念ながらそうですが、たしかに自衛隊問題を含む安全保障問題も憲法9条問題も、違憲か合憲かの神学論争だけがひたすらクローズアップされて、実際に存在する自衛隊の機能についてのチェックはマスコミも怠っていましたね。

  • 池上:その通りです。だからこんな事件が起きます。2005年にインドネシア震源とする大震災と大津波があったのは記憶に新しいことと思います。あのとき救援や復旧活動のために、自衛隊が派遣されました。ところが、そこで問題が起きた。陸上自衛隊に配備されているヘリコプターを海上自衛隊護衛艦に載せて運ぼうとしたところ、船に載らないんです。陸上自衛隊のヘリコプターは、プロペラを折り畳めないタイプ。艦載するには折り畳めるタイプでなければダメなんですね。結局、陸自のヘリを改造するまで出艦できなかった。つまり、いざというときにすぐに役に立たないムダな投資をしていたことになる。でも、「いざ」が来るまで誰も指摘しなかった。なぜだと思いますか?

  • 加藤:自衛隊の建前は専守防衛ですから、護衛艦にヘリを載せて海上に出る、というのは専守防衛の精神にもとる、よってそもそもこうした事態を想定していなかった。ヘリを運ぶという発想そのものがなかった――。

  • 池上:そう、まさに「想定外」だったわけです。本来ならば、専守防衛だろうといざ敵国が攻めてくる事態になったら、陸海空が協力しなければ防衛できません。陸自のヘリが海自の船に載ることだって想定内なのが当たり前です。ところが、実際は海自の船に陸自のヘリを載せる、という想定は侵略につながるんじゃないか、というふうに「想定すること自体」をタブーにしてしまった可能性がある。そして、マスコミもこうした実質的な視点で自衛隊の設備に対して報道をしてこなかった。政治のチェックはもちろん、マスコミのチェック機能も働かなかったわけです。

  「http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110802/221831/?P=2」より引用

その「場」が真剣なものであればあるほど、こういうことって起こりやすい。あのひとは、こういうことに気づいているだろうか。