日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

常識で判断

すでにご承知のヒロクロ読者(という云い方をするのもどうかと思うのだが)もおられると思うが、知らない人は永遠に知らないという事もあるので、そんなあなたに知っていただきたく。
事の始めはおなじみ「音楽配信メモ」のエントリ。
 音楽配信メモ オリコンが自分たちに都合の悪い記事を書いたジャーナリストを潰すべく高額訴訟を起こす
ちなみにこれがオリコンからのプレス・リリース。
 事実誤認に基づく弊社への名誉毀損について | ORICON NEWS
専門的知識やその筋の方のみ知る情報を持たない人間が、部外者のまま問題を考えるにはまず「常識」という判断基準しかない。それでこの問題について「常識」で考えてみると、

  • 通常、雑誌の特集記事にある「識者のコメント」程度に、それほど積極的な意味を責任も誰も読み取らないし求めない。
  • その程度の「識者のコメント」に対して訴訟を起こすのは、通常その特集記事を組んだ雑誌に対して行われる。
    • 何故ならコメントの内容の是非より「何故そのようなコメントを掲載したか」という雑誌社への掲載責任が問われるから。
    • 従って、逆に著者名を冠した書籍であれば、その責任はまっすぐ著者へとむかう。
  • だのに今回のオリコンは、雑誌サイゾー(しかもサイゾーである)の特集記事に際して、雑誌社ではなくコメント発言者にのみ告訴している。これは今までの常識から離れてる。
  • では常識を覆すような行為(オリコンに対するヤラセ発言)が継続的に行われていたかというと、どうもそれはなさそうである。
  • 加えて、オリコンチャートの操作が以前は容易であった、また現在でもやれないことはないという事例は、先のリンクにも音楽配信メモ オリコンのプレスリリースに対する疑問と今後の争点にも音楽評論家の小野島大氏のブログhttp://onojima.txt-nifty.com/diary/2006/12/post_ff91.htmlにも記されている。

ここまで考えてみると、それでなくとも非常に唐突感の強い今回のオリコンによる訴訟、ネット界隈での現状の悪印象を払拭するのは、プレスリリースしても容易ではない。昨今のオリコンと言えば、音楽配信業務も業績悪化で撤退したし、公表データは弱すぎるし、一介のライターに訴訟額5,000万円は法外すぎるし根拠はないしで「ただのいいがかりじゃねぇ、これ?」と思われても仕方がない。大体プレスリリースに「弊社の長年の努力によって蓄積された信用・名誉が傷つけ、損なわれる」と言っているのだがそもそも一介のライター風情のコメント(著書じゃない)程度で損なわれるような信用しか持ちえていないのかオリジナル・コンフィデンス。加えてネット界隈であればオリコンよりも津田大介氏、小野島大氏の方がよほど信用を勝ち得ている。いずれここまで盛り上がればITmediaなどのメジャーなニュースサイトが取り上げるのも目に見えている。現実世界のみならずそういったところでも戦わなくてはならない現代であればこそ、本気で闘うのだったならオリコンには戦略がなさすぎる。ここまで醸成された悪印象をぬぐうのはカルタゴハンニバルが無傷でアルプス越えをするよりも困難極まりない。
オリコンのように不特定多数を相手にするような企業が自社の風評被害を出来うる限り避けたいと思うのは常識である。それならばこういった訴訟方法など取らない方が得策だろうと考えそうなものだが、そういった外向きの視線がすでに皆無なのか何なのか、ずいぶん思い切った(自殺行為に近い)訴訟に踏み切ったものである。止めときゃ良かったのに。たとえオリコンが訴訟に勝ったとしても、そのために支払った(というかすでに今支払っている)リスクはたぶん5,000万円ではきかないだろう。

  • 追記(2006.12/21) ここに来てオリコンが小池社長名義で「ライター烏賀陽弘道氏への提訴」について | ORICON NEWSと声明を発表している。ネットの反応に対応するためか「ただ、我々の真意はお金ではありません。個人攻撃でもありません。上記のとおり、烏賀陽氏に『明らかな事実誤認に基づく誹謗中傷』があったことを認めてもらい、その部分についてのみ謝罪をして頂きたいだけです」などと低姿勢な素振りだがその後すぐ「その際には、提訴をすぐに取り下げます」とは何事か。「我々の真意はお金ではありません…」などと奇麗事を云うのなら、まず先に提訴を取り下げろ。大体がして先に引用した文章の前には「自分にとって一番大切なものが、事実誤認に基づき攻撃されるならば、防衛せざるを得ないのではないですか? 」と、自らの至らなさを認める気もない疑問形恫喝である。こうしてオリコンは秒針が一秒進む毎に自らの首を絞めているようである。