日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

立場表明

先だっての金曜日夜、「レコード輸入権」の話をしに牛飼いDJのH君に会いにいった。音楽好きの彼ならそう言葉を重ねる事なく話が通じて、この怒りを共有してもらえるだろうという目論見であった。あったのだが、全然共有してもらえなかったのだ(T_T)。したたかショックを受けて後輩と MSN を使ってまた「レコード輸入権」の話をしたのだが、やはり「温度差がありますよね」という話であった。いやー、困った。二人とも話のわからない人間ではないので、やはりこちらの説明が行き届いていないという事になる。いや仮に行き届いていたにしても共有出来ない可能性はあるのだけどね。
という訳で、ここでもう一度自分なりに「レコード輸入権」についての考えをまとめようと思う。以下の文章は、その牛飼いDJに送ったメールの文章を元に、大幅に書き直したものだ。構成がとっちらかってるのは相変わらずなんだけど。



今回の「レコード輸入権」について、どうしてこうも怒りを露にしているのかというと、結局のところレコード会社、レコード業界に対する怒りなんだよな。
■その一番最初、そもそもの発火点は「コピーコントロールCDCCCD)」だった。
せっかく iPod 買ってどこででも、車の中でも音楽が楽しめる(何せ音飛びしないのが嬉しかった)、加えて何千曲もの曲をその日の気分でアトランダムに聴く楽しみ、思いもしない曲がかかった時の嬉しいショックは特筆すべきだ。大袈裟に言うと、小さな iPod の中にクラブ DJ を潜ませたようなものだ。車を運転しながら「そー来るかぁ!」と声に出した事さえある。
その楽しみが CCCD で奪われてしまう、あまつさえ Mac ではPC用ファイルも読み込めないというよくありがちな体たらくにはいつもながら眩暈を禁じえなかった。ネット上でのファイル交換(不正ダウンロード)防止対策なのはわかるし、音質が悪い音が飛ぶ最悪プレーヤーが壊れるという前評判にも関わらず、CCCD 発売を決めたエイベックスの行為は英断だとも思った(しかし元が貸レコード屋のエイベックスがやるとはねぇ…)。
ま、しかし何たってエイベックだ。ユーロビートと明日をも知れぬヒット曲を量産するレコード会社だ(偏見なんでしょ?)。俺が聴くよーな音楽(主に洋楽系のジャズ、ロック、たまに邦楽ロック、クラシック)ならアーティストが小うるさいだろうし、そうそう音の悪いとされる CCCD での販売は許さないだろうから、俺には火の粉は降りかかるまい……とまぁそう思っておりましたよ。小谷美沙子のベストCD 見るまでは。彼女の名曲「嘆きの雪」を聴いた時に感じたアレンジのクオリティの高さから、まさかこの歌手の CD が CCCD になる事ぁないだろう…と高を括って、何も知らずに「じゃあ俺そのベスト買ってやるよ」と女友達に口約束してた訳です、本当に口約束になりましたが(笑)。断っちゃったもんな“こんな不良品買えるかっ!”って。ここではっきり気づくべきでしたよ、あいつらは本気だって。そこに来て
■あの The Beatles の「Let it be...naked」が CCCD 発売ですよ。
何考えてんだおい東芝EMI。お前ら本当にそれで売る気なのかと。あのロックの礎を作った(しかも俺が音楽を意識的に聴くようにしてくれた)あの Beatles 様を CCCD にするんかと。お前ら本当に芸術作品売る会社なのかと。目の前に担当者いたら小一時間問い詰めたい衝動を禁じえませんでしたよあたしゃ。何ですかそれは。人馬鹿にしとるんですかい。
■「CCCD 買わないで音も聴いた事ないのに、どうしてそこまで怒れるの?」って?
そりゃ怒るよ安心して買えない商品売りつけるんだものレコード業界。俺の楽しみ奪ってんだもん。iPod にも取りこめないし、音飛びするかも知れないし、最悪プレーヤー壊れるかも知れないし。今までちゃんとした石橋(CD)で渡れた河を、わざわざ丸木橋CCCD)に変えて渡れってなもんだよ。渡るには渡れるけど、落ちたら自己責任だよ(笑)。
そりゃ今ならCCCD発売当初より音も良くなっているのでしょうさ。買ったら買ったで音飛びだってしないかもしれない。でも俺の時は音が出ないかも知れない。プレーヤーが壊れるかも知れない。
心配のしすぎ? そりゃ普通の CD だって音飛びが絶対しない、プレーヤー壊れないなんて云えない(可能性としてないとは云えない)。でももし CD なら音飛びすれば返品だって可能なんだから、それじゃあ返品可能な CD を選ぶでしょ普通? それにもしCD聴いている内にプレーヤー壊れたなら「新品ならそもそもハードが不良品」「古いのならそもそも壊れるべきして壊れた」って、納得出来るじゃない? CCCD にはそーいう納得が出来ないんだぜ? ハードメーカーは CCCD の再生について「保証出来ない(CD の仕様から外れている故)」って云うし、レコード会社は「自己責任で」と宣うし。そこまで云われてるのに CCCD 買って聴いて、もし音飛びしたりプレーヤー壊れたりして諦めなきゃならんなんて、買った俺が馬鹿みたいじゃない?
いい大人なんだから、壊れたらプレーヤー買えばいいじゃないって? そりゃ買えるよ即金だろうがローンだろうが(実際には貯金してますハイ)。でもそういう問題じゃないだろうこれは。大体がしてその同じ台詞、お小遣いで音楽作品を買うような小学中学高校生に言えないよ。レコード会社がCCCDを売ると云うのは、何も俺だけに売る訳じゃないんだから(笑)。大体だよ、
■みんながみんな違法ダウンロード&アップロードしてる訳じゃないだろうさ!
レコード業界が好況なら目をつぶったかも知れない話だぜそもそもが。レコード業界は世界的に不況な訳だから、その理由を(敵を)見つけたくてやっきな訳だよな。
たとえば還流盤のせい。
音楽ファイルの違法ダウンロード&アップロードのせい。
私的なCD-Rによる複製技術の広範化のせい。
違法アップロード以外は、どこにも法律的問題ないじゃないか? それならレコード業界は、それらを前提として商売すべきだろうさ? 法律的問題のないものは認め、あるものは叩く。そーいう奴をしらみつぶしに罰していくのが筋じゃない、例え面倒でも? 実際やってるんでしょアメリカなんか? それによって消費者のモラルを醸成するって効果もあるでしょうさ。
そうでなかったら CD より音が良くなるっていう DVD オーディオなり SACD にメディアチェンジするしかないでしょ? それならまぁ音質向上のメリットもあるし、仕様自体にコピーコントロール機能が付加されてるんだから、完全に防げないとはいえ CD に比べればまだマシだし、そーゆう理由なら納得しないでもないよ。レコードから CD に移行した時だって、扱いが簡便だとか音が良いとか、曲がりなりにも消費者へのメリットを謳ったんだから。
既に普及している CD からメディアを変えるのは躊躇するわ、でもDVDのコピーコントロールは完全とはいえないから移行には躊躇するは、妥協案で CCCD で尻拭いは普通の消費者かよ? 痛み伴わないでいいとこどりなんて、出来る訳ないでしょうが。
■それでも俺ひとり我慢してればいいと思ってましたよ、俺だけの怒りだもの
それでも、それでもまぁこの時点でも、まだ今回みたいに怒りを表には出しませんでしたよ。「どうしようもねぇよ日本のレコード業界はよぉ」と愚痴いってすませてましたよ。レコード屋行く度に CCCD 増えてても(ノラ・ジョーンズカサンドラ・ウィルソンも皆 CCCD だよまったく、田舎なんか輸入盤すらろくにないんだぞ。おまけにあってもユーロ盤でやっぱり CCCD だったりするんだぞ)、何せ世の中の趨勢だし、たかが俺一人の怒りでしかないし、俺一人がちびちび我慢して輸入盤買うなりすればいいんだもう…と内圧高めていた矢先に
■今回の著作権改定→「レコード輸入権」問題ですよお父さん!
あのね。もうね。がっかりしました。本当にね。ガッカリですよ。
そこまでして俺の楽しみ奪いたいのかい、と。
そこまでして退路断たせたいんかい、と。
何ですかもう俺に新譜は買うなと云うんですかい、と。
法律上問題のない私的複製権を認めない商品売っておいて
(だって普通の常識で考えれば、私的複製も違法複製も完全にコントロールするなんて無理だって事ぐらい、わかるじゃない? 大体デジタル化した時点でパンドラの箱開けちゃったんだよ俺ら全員。ここまでその楽しみを知っている消費者の欲望を消せる訳ないでしょ? そんなことしたら逆に市場を狭めかねないってぐらいわかんないのかね?)
それでも作品自体が売れなくて
ビートルズの「Let it be...naked」なんか、輸入盤の方が邦盤より売上枚数多いンだよな。当たり前だわな。安くて、しかも壊れる心配がない、聴けない心配のない、仮に壊れても聴けなくてもそれなりの保証が期待出来るCDを買うよ)
それでもって輸入盤の規制ですかい?
いったい私にどうすれと言うんですかね?
もうね、内圧地味に高めてきてましたからね、ここに来て怒り最高潮最頂点ですよ。論理も筋もへったくれもありませんよポコペン。もう、ね。もう「自分個人の怒りでしかないから」なんて黙ってません。黙ってたら、この社会から俺の楽しみ奪われちゃう。例え筋も論理も通ってなくてもいい(良くはないんだ本当は、問題が広がりを持てないから)、まずは云わなくちゃならん。いいかげんにしてくれよ、と。
それとも「はじめからないと思えばいいんだよ、そんなに怒らんで。仕方ないじゃない? 昔出たCD買えばいいじゃない、今すぐ音楽がなくなる訳じゃないんだからさ」……とおっしゃるんですかね(笑)。
そりゃあ音楽は聞けるでしょうし聴けなきゃ明日死ぬ訳じゃないですよ。でも好きな音楽を好きに楽しめない訳じゃない? Aの最新作は聞けないけどBの旧作聴けるからOK♪ なんて納得の仕方なんて、出来ないじゃない? 何のためのここまで闇雲に豊かになったんですかこの国は(笑)。
■結局レコード会社も役所も(ついでに消費者も)、企業・組織・経済っていう現実に<負けてる>んだよね。
たぶんその現場に働く人一人ひとりに話をすれば「いやー、こういうのって問題あるとは思うんだよね個人的には。でも仕方ないじゃない? 上もそう決めた訳だしさ、現実そうなっているんだから」ってね。だって家に帰ればみんな個人で、そこではそーいう楽しみを享受しているのだもの。企業・組織・経済と云う化物の自律運動に追従しているだけなんだよ。
もちろん、それらを全否定はしないよ、出来る訳ないし。でも、程度問題って、あるだろ?
……負けざるをえないのかもしらんけどね。どう負けるかの問題なのかもしれない。

「君と世界との闘いにおいては、世界を支援せよ」