日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

さよならぼくの子ブタちゃん

(もう結構前に書いた文章なのだけど、読み返してみて、もう晒してもいいだろうと思った。メリークリスマスイブ)

 彼女はグラマラスで、鼻がペチャンコだった。その姿はぼくに、端的に言って豚を連想させた。彼女が特別デブだったという訳ではない。確かに美人とは言えないかも知れないけれど、でも可愛かった。それがあばたもえくぼの類だったにせよ、そんなことは当時のぼくにはどうでも良かった。黒のブラがよく似合った。

 彼女の鼻をつまむのが好きだった。ぷにぷにして、やわらかかった。もしかしたら、彼女の鼻をつまみながら「ぶひぶひ」とか言ったかも知れない(言いそうだ)。「このブタみたいな鼻が好き♪」とも、言ったかも知れない(言いそうだ)。鼻をつまむと彼女は目をつぶっていやいやをした。自分が一番気にしているパーツを褒められても嬉しくはなかったろう(今ならそう思う)。でも、それもこれもみんな可愛いと思った。

 可愛い子もきれいな人も、彼女以外に沢山いた。けれども、当時のぼくのために気を使い、当時のぼくのために心を砕き、当時のぼくを愛してくれた女性は、勿論彼女しかいない。その事実に心が傾かない方がどうかしている。

 ぼくは彼女が好きだった。そして、もっと好きになろうとしていた。そして何もかもぼくが台無しにした。さよならぼくの子ブタちゃん。