日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

その手ざわりを手放さなかった唄

 11月最後の金曜日、我らが音楽の殿堂・遠軽町の“ふくろうカフェ”でライブ「PETA & 宮崎勝之 北海道二人旅」を堪能してきました。良いライブでした。PETA氏のギター、宮崎氏のフラットマンドリン、どちらも耳も体も喜ぶサウンド。その音を聞いているだけで桃源郷に辿り着きました。ありがとうございます。
 あと、お二人の歌ったオリジナル曲のいくつかが心に沁みた。特にPETA氏の「たそがれの街」は胸に染み入った。PETA氏に読まれると怒られるだろうが、その歌はアップ・トゥ・デイトな曲ではない。ライブの空気感やPETA氏のたたずまい、演奏を勘定に入れなければ、その曲はひと昔前のニューミュージックである。歌詞の中でたしか “恋人と公園のベンチで待ち合わせ…” みたいなフレーズがあったのだけど、いや公園のベンチで待ち合わせってお前それ2012年の風景じゃないよ1970年代だよそれは大体ケータイあるだろケータイ……などと、目を閉じて唄を聞きながら一人ツッコミを入れていたのだが、でも、だからどうしたっていうんだ、ということである。それは確かに今はなくても、いつか、間違いなく存在したかけがえのない風景だ。そんな、誰にだってあるだろう、ありふれた、でもそのかけがえのない世界を、こうして手放さずに音楽にして届けてくれたPETA氏に、そして宮崎氏に、感謝したい。僕はたぶんはじめて、レコードやCDで聞く音楽がどれほどのものを置き去りにしているのかを、この夜に気づかされた。