日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

ラジオで、谷山浩子が

 おとついの金曜日、とある集まりから帰宅してラジオを入れると、というのは正確ではなくて iPhoneradikoを立ち上げると、いつもならHBCの番組が流れ出す筈なのに、どうした訳かSTVが選局されていて、ひどく懐かしいしゃべり声が聞こえてきた。谷山浩子だった。
 その番組はオールナイトニッポンゴールドというらしい、もしや今日から毎週谷山浩子のおしゃべりが聞けるのか? と思ったらこの日一日だけでした。なーんだ。しかしこんな偶然、あるんだな。もう55歳になるとしゃべっていたが(昔は絶対に年齢を言わなかったよな)、相変わらず可愛い声をしている。
 今年でデビュー40周年にもなるらしい。というと俺が7歳の時から音楽活動をしていた事になる。はじめて聞いた彼女の曲は「河のほとりに」だったろう。こんな歌を聞いていると、今という時空からこぼれおちて、時の木陰に浸ってしまいそうになる。

 デビュー前の中学生の頃からレコード会社(キングレコード)に自作の曲のテープに吹き込んで持ち込みをしていたというから、かなりの早熟である。ただ、本当は“ソングライター”=作曲家になりたかったのに「“シンガーソングライター”の方がデビューしやすい」という70年代らしい理由から音楽業界に飛び込むことになった、と話していた。なのでデビューの頃はコンサートが大の苦手で、コンサート前になると胃を固くしながら「クーデターが起こればいい」「死なない程度の事故に遭わないか」と妄想していた、という。
「俺が俺が」「私が私が」という自意識の強い“シンガーソングライター”には作れない、自分がある世界、ある関係、ある瞬間の中で「主人公」でいる、「主人公」でなくてはならないと信じている人達から遠く離れた静かな音楽を、彼女は作り続けて来たのかも知れない。テレビやラジオに出ても先頭に立とうとしない、そんな谷山の振る舞いに心を寄せた人は、きっと少なくなかっただろう。
 今の若い人たちに、彼女の歌はどんな風に聞こえるかはわからないけれど、もしその耳が静寂を求めているのなら、彼女の歌は確かに応えてくれるだろう。