日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

iPad雑感

 お得意の秘密主義とリークの果てに、1月27日(火)現地時間午前10時“アップル版タブレットPC”と噂された例の "iPad" が発表された。

 Keynote の映像で iPad 本体を見た時の第一印象は「ダサッ、ホントに iPhone 大きくしただけじゃん」だった。モニターのサイズに比べてアイコンのサイズが小さくてスカスカじゃねえかよ……しかし、アップルのデザインや UI を軽んじてはいけない。それは今自分のメインマシンである通称“大福餅”こと iMac G4(flat panel) を初めて見た時に学習済みである。アップルの製品は写真や動画から受ける印象と、実機を目の当たりにした時の印象が素敵に異なるのだ。使用している材質やその質感もデザインの一部としているアップルの製品は、映像だけでは伝わらないところがある。
 発表までのお祭り騒ぎに比べて、発表後の雰囲気に盛り上がりが感じられない気がする iPad だが、アップルの意気込みには並々ならないものがある。すでにアップルの公式サイトはトップページに "iPad" を大きく掲げ、詳細な特設ページも用意した(まだ2ヶ月も先の販売なのに)。プレゼンテーション用の動画も素晴しい。この動画を見ていると本当にわくわくしてくる。



「これで“パーソナル・コンピュータ”の定義が変わるかも知れない」
「ついにアップルは“家電”を出して来た」
そんな風に考えたの僕だけではなくて、例えば "Drift Diary XIII" というブログを運営している drikin さんや、 "煩悩是道場" の ululun さんはこう書いている。

次に、パーソナルコンピュータを次の次元に押し上げたなぁと、感銘を受けた部分ですが、これは、ひとえに、製品の完成度であり、GUIです。これについては、カタログスペックで語れる話ではないので、まずは、iPadのページからリンクされているビデオを見てもらうと、何となく感じるのですが、ユーザー体験や、使い勝手の作り込みが半端じゃないです。今どきPCは当たり前のように、一般家庭に普及していると言われていますが、実際には、まだまだ使えてない(使いこなせてない)人達も沢山居ます。そういう人達の多くは、やはり、現状のパソコンの使い勝手が大きな障害になってると思います。iPadなら、そういう人達にも十分にインターネットの便利さや、パソコンの機能を使いこなせるのではないかと、思いました。


("Drift Diary XIII" より "iPad初感")

◆情報端末としてのiPadは真の意味での「パーソナル」コンピュータへの道を示す

iPadの想定顧客は、iPodTouchやiPhoneで初めてアップル社の製品に触れたユーザや、ノートPCを今まで所有してこなかった人達ではないか、と考えています。私もノートPC欲しいよノートPCと思いながら「でも重いし」とか「価格が−」と躊躇っていましたので、iPadの重量と価格にはヤラれましたね。


確かにmacbookに比べると性能が劣るんですけれど、結局はユーザーシーンとして自分にmacbookiPadのどちらが「しっくり」くるのか、という事を鼻先に突き付けられてしまったわけで。


ですので「デカいiPodTouch」ですとか「マルチタスク出来ないとかw」とDisっているような人は想定顧客として考えていないんじゃないんですかね。そういう人は黙ってmacbookを買えば良いわけで。


私は、数年以内に「パソコン」と言われる物のメインストリームをiPadのような筐体が寡占する、と予想しています。


パソコン、という言葉は「パーソナル・コンピュータ」の略語でありますが、ノートPCはともかくとしてデスクトップPCが「パーソナル」な存在だとは思えないんですよね。いや、今まではそれで良かったと思うのですけれど、いつでも何処からでもユーザが欲しいと思う情報にリーチ出来る情報端末としてのコンピュータにそろそろバトンタッチする時期なのではないかと。


("煩悩是道場" より "アップル社はiPadを2010年代の「パーソナルコンピュータ」として売りたいのではないかな")

 普通のひとにとってパソコンが“インターネットを見る機械”となって久しい。年齢を問わず、日常的に多くの人がパソコンを通じてインターネットを活用している。にも関わらず「家に帰ってまでパソコンを使いたいとは思わない」という人はざらにいる。特に10代も含めた若い人は「ケータイで十分」というのがほとんどだろう。
 それはいま使っているパソコンが情報“家電”になりきれていないからだ。そういった潜在的不満=潜在的ニーズ、例えば自分の父親や母親といった機械に詳しくない人に向けて安心して薦められる“家電製品”として、iPad は作られている。だからここ最近の iPad への批判が、日産マーチに対して「何故10人乗りじゃないんだ」「何故エンジンをV型6気筒DOHCツインターボにしなかったんだ」「そもそも何故荷台がないんだ」と言っているように見えるのは、iPad が“アップル版ネットブック”でもなく“アップル版タブレットPC”でさえない“家電製品”だからである。
 またしても、と言うことになる。またしてもアップルは新しい市場込みで新製品を作り出した、と。こういったマーケティング能力(予知能力、と言っても良い)とそのセンス、ライフスタイル込みで新しいビジョンとともに製品を提示出来るアップルという企業に太刀打ちできるのは、MicrosoftGoogle を含めてもまだないだろう。まあそんなアップルでも、どういうビジョンから生まれたのか "iPod Hi-Fi" というオーオタの神経を逆なでしたまま終焉を迎えたプロダクトもある。そんなこと言い出したら "G4 Cube" だとか "PIPPIN ATMARK" とか死屍累々である。


 アップルの黒歴史はこれだけにしたいものだが、そもそもすぐに売れるような製品ではないにしても、iPad黒歴史に呑み込まれないとはそう簡単に言いきれない。まず何よりも、現状のネット環境から見て Flash 非対応というのはご無体な話である。アップルにはこういう現実よりも理念を(未来を、と言ってもいい)選択する体質があって、僕のようなマカーにはいっそほほ笑ましいのだが、情報家電たる iPad という製品の性格から見ると、やはりやりすぎの感は否めない。加えて本国アメリカのように映像コンテンツ配信、電子書籍市場が完備されていない日本において iPad がどこまで波及出来るのか、そう考えると多少心もとないところもある。すでに電子書籍マーケットで先陣を切った amazon = kindle との比較も出てきているが、ユーザ・エクスペリエンスの点から見ても、電子書籍バイスとしての iPad潜在的アドバンテージは大きいはずだ。今年2010年は「電子書籍元年」と言われているようだけど、iPad の登場が日本の電子書籍市場にどのような影響を与えられるのか興味深い。
 個人的には書籍よりも雑誌、なかんずく新聞の登場には叶うことない儚い期待を抱いている。北海道新聞iPad向けに販売してくれたら俺は iPad 買うぞ。間違いなく買う(それでどれだけ紙資源が無駄にならずにすむか)。一ヶ月1,500円ぐらいなら快く払うよ俺は。もし1,000円ぐらいだったら朝日とか日経とか毎日とかもう一紙あわせて買ったっていいぐらいだ。
 気軽にどこへでも持ち運びが出来て、ボタン一つですぐに(パソコンみたいに待たされない!)インターネットにアクセス出来る。予定もメモも簡単に記入出来て、友達に見せたい写真や動画もすぐに見せられる(これで映像を外部出力出来ればベストだ。たぶん出来るようになるだろう)。個人的には iPhone 以上に期待値の高い製品=ビジョンをアップルが打ち出して来たことを心から喜んでいる。後は金の算段だ……ううむ。




追記:このエントリーを書いたあとに iPad についての興味深い考察を読んだのでリンクを張っておきます。