日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

幸せな男、トム・ダウド

トム・ダウド いとしのレイラをミックスした男 [DVD]

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 アメリカ、アトランティック・レコードとの関わりからレコーディング・ミキサーの仕事を始め、プロデューサーとして様々なアーティストの名盤を作り上げたトム・ダウドのドキュメンタリー。彼の人生は、SP盤からLP、CDへ、原盤への直接録音から2トラック、8トラック録音、そしてデジタル録音へと進化を遂げるレコーディング技術の変遷、そしてジャズからソウル、ロックへと変化していくアメリカ音楽の変遷そのものだ。面白くない訳がない。大体ディジー・ガレスピージョン・コルトレーンといったジャズの大御所から、レイ・チャールズアレサ・フランクリンなどのソウルシンガー、そしてクリーム、オールマン・ブラザーズ・バンドエリック・クラプトンロッド・スチュワートといったロック・レジェンドまで、今なら各ジャンルごとに腕利きのプロデューサーはいるだろうけど、彼のようにジャンルを越えてプロデュースした人間はなかなかいないのではないだろうか。
 たぶん今のように各ジャンルが先鋭化されてはいない牧歌的な時代だったろうから、どんな新しいサウンドでも「音楽は音楽」と捕らえられたからこそ、こんな風な仕事ぶりを発揮出来たとも思うが、何よりトム・ダウド自身が音楽そのものを愛していた人であり、そういう素地がなくてはこんな風に成功しなかっただろう。見ていてつくづく幸せな人生だなぁ、と思わずにはいられない。レコーディング技術に興味のある方、アメリカポピュラー音楽史に興味のある方にお薦めします(そんなにいないでしょうが)。