日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

just a little bit loneliness

前回紹介したエヴァリー・ブラザーズの名曲は原題を"All I have to do is dream"と言い、邦題が“夢を見るだけ”なのだが、実はこの邦題を間違えて「夢を見ただけ」と憶えていたのを、後になって気がついた。間違えて憶えていたタイトルを英訳すると"Only I was dreamin'"とでもなるだろうか。察していただければ幸いである。


むかし、手元に資料がないので確認出来ないのだが、作家の片岡義男が、エヴァリー・ブラザーズとビートルズそれぞれのアルバムジャケットやブロマイドを見くらべながら、両者に共通した匂いを「少年たちの排他性」だと指摘していた。女性であればピンと来る方もいるだろう、自分の恋人の友人、しかもかなり親密な友人に紹介される時に気後れや阻害感を感じた方は多いだろう。こういった、親密な仲間内の少年同士が醸し出す排他性、自己完結性は、当の少年たち自身には当然すぎてわからないだろうが、少年を卒業した男なら誰でも理解出来るだろう。つい最近も職場の後輩が「もう女のいる店なんかいかなくっていいっスよ。変に気ぃ使わなくていいし、オヤジ同士で飲んでた方が楽しいもん」と言っていたが、まあ男というのはそういう排他的な少年性をいくつになっても抱えているのだ。
片岡義男はそんな排他性を、閉鎖的なスタジオに閉じこもって演奏・録音作業に没頭し、或る世界全体をレコード一枚で表現する“コンセプト・アルバム”を制作することになった、ライブ活動停止後のビートルズと重ね合わせてみせた。俺は片岡義男の小説はほとんど読んだ事がないが、この意見には軽く唸った。
まあそんな話はともかく、特に初期から中期にかけてのビートルズの曲の多くには、マイナーコードひとつない曲でさえ裏地にはいつも淋しさが隠されている。それは少年時代の終りに気づきはじめた、男の子の未来への不安である。少年はふいに告別を告げられる、夏の青空がふいに秋を告げるように。特に枯葉色のジャケットがすでに哀しいアルバム"Beatles for sale"や"HELP!"などは、その手の佳曲がめじろ押しである。"Every little thing"とか"Baby in black"とか"The night before"とか"I've just seen your face"とか、もし機会があればあなたにも聴いてほしいと思っているが、どうだろう。


All I have to do is dream Written by Don and Phil Everly

君を抱きしめたくなったり
君の魅力で切なくなったり
君がほしい時はいつだって、僕は夢を見ればいいんだ
夢、夢、夢を、夢をね


夜さみしくなったり
君にぎゅぅっと抱きしめられたくなったり
君がほしい時はいつだって、僕は夢を見たらいいんだ


君を恋人にしてみせる
ワインのような君の唇を味わうんだ
夜も昼もいつだって
ただ難しいのは…ああ、そうさ
夢の中でずっと生きられないことさ


死にたいぐらいに君が必要
愛してるんだ、さよならなんて言わないで
君をもとめる時はいつだって、僕は夢を見ればいいんだ


君を恋人にしてみせる
ワインのような君の唇を味わうんだ
いつだって、夜に昼に
ただ難しいのは…ああ、そうさ
夢の中でずっと生きられないことさ


死にたいぐらいに君が必要なんだ
愛してる、さよならなんて言わないで
君をもとめる時はいつだって、僕は夢を見ればいいんだ


夢、夢、夢、夢をね……


「僕がすべきは夢を見ること」(邦題:夢を見るだけ)作詞作曲:エヴァリー兄弟 意訳:hirofmix