日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

別冊Stereo Sound"Beat sound (No.7(2006)) (別冊ステレオサウンド)"

hirofmix2006-10-28

俺が“別冊和田博巳”と心の中で揶揄(笑)しているステサン別冊の"Beat sound (No.7(2006)) (別冊ステレオサウンド)"が最近出た。もう7号目になったのか…ここに来てやっと、やっと表紙が落ち着いた。この雑誌はずーっと表紙が右往左往し続けていて、落ち着かなかった。表紙の落ち着きのなさは内容の混迷を表すものと理解している俺としては、これでやっと雑誌としての体裁が整ったという気がしている。とりあえず、ここからやっとこの雑誌がスタートする、という気がした。
加えて今号から、文字組みが縦組みから横組みへと変更された。たぶんステサン系の雑誌は基本的に縦組みで、もしかするとこの変更は英断だったのかも知れない。これはこれで悪くはないとは思う。ただ最初にページを開いた瞬間から慣れるまでにはやや時間がかかった。
横組みになったせいで、誌面が全体的にスマートになった。文章よりも写真やレイアウトで楽しむ雑誌にシフトした印象を与える。しかしこうなると、以前までの、縦組みのみっちりした書き込み感も捨て難い気がしてくる。読者はいつもわがままである。ページによってはスカスカの印象も与える(例えば片山恭一の短文のページ)。個人的には第三特集以降のページは、もうちょっとこてこてしててもいいと思う。本体の主流記事を支えるのは、こうした傍流誌面だと思うのは、きっと俺だけではあるまい。
この雑誌の弱点は、何といってもマンネリ化した特集記事である。「優秀録音アルバム100選」だとか、もう何回続けていると云うのか。そういった点から、1966年から1975年までにの10年間に発表された“優秀録音アルバム”を一年ごとに区切って紹介した第一特集「ロック伝説」は、今までと違う切り口からの紹介方法として評価したい。今後とも優秀録音アルバム紹介は継続してほしいのだが、その紹介の仕方には今回のように趣向を凝らしてほしい。大体このテーマ、オーディオ雑誌が“優秀録音アルバム”を紹介するのは当然のことなのだから、第一特集でやらなくてもいいとは思う。
あと、本家ステサンとの関係もあるだろうが、対象ジャンルをロックに限定することはないと思う。
御大菅野沖彦氏のおかげもあって「季刊ステレオサウンド」は本邦オーディオ雑誌の王道足りえているのだが、メインがメイン足りえているからこそ、サブとしてのビートサウンドはもっとカウンターとしての役割を明確に提示してほしいのだ。「いやだから対象ジャンルをロックに限定して…」ということだとは思うが、そういったジャンルでの対抗/区分けではなく「ロックを含めて優秀録音とは何か?」「オーディオとは何か?」という意味において、カウンターとしての提示をしてほしい。例えば先にあげた菅野御大ははっきりと「ライン録音」は認めないと云い切っているのだが(それはそれで個人的には首肯できるのだが)、素晴らしい音楽とすぐれた録音はマイク録音ばかりとはかぎらないだろう(そんなことを云ったら現在進行形のロック、ポップスなんかほとんど優秀録音と呼べなくなる)。そういった音楽と、その実在も含めてこそ「優秀録音とは何か?」という意味を問い続けてほしい。*1
さて次にライター陣なのだが、ちなみに今号は赤岩和美、大鷹俊一小野島大小林慎一郎、嶋護、宮子和眞、山本広司、渡辺亨、和田博巳、原田和典、藤原陽祐、真保みゆき、小原由夫、広瀬陽一。ほとんどが今までのビートサウンドに登場したライターなのだが、この中でステサン本紙にも原稿を書いているのは小林、嶋、和田、小原の四名であり、ステサン誌上に自分のコーナーを持っているのが和田と嶋の二人である。*2個人的にはこの嶋と小野島、和田、山本、広瀬なんかが中心になって今後のビートサウンドを企画してくれると、かなりぶっとんだ誌面になってくれるのではないかと期待しているのだが……
あと是非ともやってほしい企画が「10万円オーディオセットのすすめ」である。新品を紹介しなくては商売にならない、という雑誌経営のお家の事情は重々承知しているつもりだが、このビートサウンドという雑誌を手にした若者が、おいそれとセット30万円近くもするオーディオセットを買える訳がないし、買おうとも思わないだろう(しかも録音機能なし、レコードプレーヤーなしで)。そういった読者のフォローとして、出来れば先に挙げたライター陣にそれぞれ10万円を渡し、中古市場も視野に入れた上で(入れないとこの値段では組めない)それぞれベストのオーディオセット(CDプレーヤー、アンプ、スピーカーの三点を揃えるのが最低条件)を組んでいただきたい。セット10万円という金額なら「俺にも出来る」と思うオーディオ初心者もいるだろうし、そのシステムから各ライターの音楽やオーディオに対する嗜好性、方向性も伺えてかなり楽しいだろう。全員で自分の組んだシステムの試聴会をやるのもかなり楽しい。最後は読者プレゼントにしてしまえばかなり購買者も増えるのではないか(笑)。これを読んだビートサウンド編集担当はぜひこの企画を検討するように。採用の際には俺に薄謝を出すように♪
以上、どちらかと云えば悪口に近い駄文を書いてきたが、今後とも俺はちゃんと買い続けるので、ビートサウンド編集一同には今後とも是非頑張っていただきたい。

*1:小野島氏が今号でプッシュしていたコーネリアスの新譜"Sensuous"なんか、その意味での試金石になると思う。

*2:特に、紹介するアルバムを闇雲に買いたくなるという欲望を喚起する嶋氏こそ「ステサン界の蓮實重彦」と呼ぶにふさわしい。