日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

おおカレン、誰より君を愛していた

Singles 1969-1981 (Hybr) (Ms)

Singles 1969-1981 (Hybr) (Ms)

季刊「STEREO SOUND」誌の別冊である「BEAT SOUND」誌第5号の連載記事「SACDマルチチャンネルディスク音場研究」に掲載されていたこのアルバムが気になっていた。それがこの「singlese 1969-1981 Carpenters」である。
評者の小原由夫による記事の冒頭を抜き書きしてみよう。「本年初頭、輸入盤市場で話題になったディスクがあった。ビッグアーティストの新作ではなく、ましてや大向こうを唸らせるようなロックの名盤でもない。しかしそれは、殺伐とした現代社会に静かに浸透し、多くの人の疲弊した心を優しく包み込んで癒したのだった」もし私が編集長なら、上の太文字部分を赤ペンで訂正させたに違いない紋切り型の羅列である。大体何だこの「包み込んで癒したのだった」ってのは。「包み込んだ」でいいじゃねぇかしつこいな小原。しかし恐ろしい事にこのアルバムは私をして「疲弊した心を優しく包み込んで癒したのだった」。そしてその事実を裏付けるかのようにこのアルバム、輸入盤でしかもSACDの癖に、只今アマゾンでカーペンターズのアルバム中売り上げ第1位なのだ。
まず、まずは何よりもこのカレンを見てほしい。こんな“カワイコちゃん”の笑顔に胸キュンしない御仁がいるだろうか。音の良いアルバムを求める気持ちに嘘偽りはないが、このジャケットのカレンに心魅かれたのを告白しよう。
そして、しかも、音がいい。すこぶるイイ。
各楽器の音ひとつひとつの粒立っていて、特にドラムの音のリアリティにはかなり驚かされた。11曲目「オンリー・イエスタディ」のサビ前のドラムのフィルインなど、聴く度にドラムを叩く映像が目に浮かんでくるほどだ。また2曲目「スーパースター」冒頭のピアノによる低音など、キーを弾く瞬間の弦をアタックする感触までしっかりと聴きとれる。また、これはうちのオーディオセットの特徴によるのかも知れないが、各楽器の音がよく分離して聞えて気持ちがいい。録音技術の低いアルバムを聴くと、音全体がもっさりしたかたまりになって聞こえてくるのだが、このアルバムはそれぞれの音がクリアにリマスタリングされており、他のSACDに比べてもそのクオリティの高さにため息がでる。
そして何よりカレンの歌声! 彼女がその声をすーっと延ばした瞬間、湯加減のいい風呂につかったように、体じゅうが一気に蕩けていってしまう。つまらない曲だと常々思っている15曲目「sing」でさえ、カレンの歌声と子どもたちのコーラスのせいで、最後まで聴き通せるのである。
その結果、買ってまだ3日しか経っていないのに、もう5回ぐらい聴き通してしまった。もうそれぐらい音がいいのだ。
SACDを聴ける環境にある方に、是非とも聴いてほしい一枚である。何の憂いもなくこのアルバムを推薦することが出来ます。