日曜日の食卓で

とりとめなのない話が書かれていると思います

ほんとになっちゃったよ……

前回YOMIURI ONLINEのマッチポンプと揶揄した記事が、総務省の「情報フロンティア研究会報告書」の決定稿の中に具体的提案として盛り込まれていました……嘘だろおい。
という訳で、その決定稿から引用してみましょう。引用先は第三章「提言」の「1.安心してICTが使える社会づくり」中の「(1)ネットワークの信頼性を高めるための個人のICT利用意識の向上」から。

私たちは、今後の教育現場における取組に期待したい。学校とは人と人の間 のコミュニケーション手法を学び、他人と交流する能力を養う場でもある。I CTを活用したコミュニケーション能力は学校で学ぶことが望ましい。いわゆる情報検索・探索技術やネットを介した互学互習のやり方の習得といったことに加え、ICTにより実現されるバーチャルな環境を、現実社会と同じ感覚で活用すること、すなわち、サイバースペース上で実名又は特定の仮名で他人と安全に交流することを自然の術として身につけるための教育が必要である。具体的には、ブログやSNSの仕組みを学校に導入することを提案する。学校の中でセキュアなネットワークを整備した上で、児童・生徒が自らのアカウント を持ち、実名でブログやSNSを用いて他の児童・生徒と交流することでネッ トワークへの親近感を養うとともに、ネット上での誹謗中傷やプライバシー侵害等に対する実地的な安全の守り方も同時並行的に学ぶことが重要である。

いやぁ……ブログ・SNS学校導入ですか。こーゆう「自分が好きだからやる」ようなもんを、どうやって「自主的」に行わせるのか、考えただけで現場の先生方が不憫でなりません。それにこんなことやるなら、最低でも学校に一人は専門職員必要だと思うぞ。それに大体さ、「ICTにより実現されるバーチャルな環境を、現実社会と同じ感覚で活用すること、すなわち、サイバースペース上で実名又は特定の仮名で他人と安全に交流することを自然の術として身につける」っていうのは、取りようによっちゃあひきこもりの皆さまに体のいい「社会参加」の気分を与えやすくするだけだぞ。掲示板とメールで世界のすべてみたいな気がしてもしょうがないだろうに。
そもそもこの具体的提言なんだけど、前に引用した報告書(案)には、次のような簡易な書き方しかしていなかったんだな。

こうした課題を克服する方策の一つは、義務教育課程である初等・中等教育 の段階で高度なICTリテラシー教育を行うことである。個人のICT利用意識の向上にも関連するが、ICTにより実現されるバーチャルな環境を、現実 社会と同じ感覚で活用すること、すなわち、サイバースペース上で実名又は特定の仮名で他人と交流することを自然の術として身につけるための教育が必要である。

文部科学省に丸投げですな、総務省。今つらつらと思うに、先の「具体的提案」を盛り込みたいがために総務省YOMIURI ONLINE使って煽ったんじゃねぇのか下司の勘ぐりもしたくなる。でなきゃ意図が見えないものな、あの一連のマッチポンプ記事。
しかし新聞記事といえば気になるのが、例えばヤフーニュース経由の共同通信記事だ。すぐリンク切れするんで全文引用する。
 *「実名でのネット活用促す 総務省「悪の温床」化防止」

 総務省は27日、自殺サイトなど「有害情報の温床」ともいわれるインターネットを健全に利用するために、ネットが持つ匿名性を排除し、実名でのネット利用を促す取り組みに着手する方針を固めた。匿名性が低いとされるブログ(日記風サイト)やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)を小中学校の教育で活用するよう求め、文部科学省などと具体策を詰める。
 今週初めに発表する総務省の「情報フロンティア研究会」の最終報告書に盛り込む。
 国内のネット人口は増加する一方だが、匿名性が高いために自殺サイトの増殖や爆弾の作製方法がネットに公開されるなど、犯罪につながる有害情報があふれている。総務省はそうしたマイナス面を排除し、ネットを経済社会の発展につなげていくためには、実名でのネット使用を推進し、信頼性を高めることが不可欠と判断した。(共同通信 6月27日9時36分更新)

だーかーらー、決定稿のどこにそんなこと書いてあるんだよ共同通信決定稿を「実名」「有害」「自殺」「マイナス」「匿名」で検索しても何もヒットしないし総務省はそうしたマイナス面を排除し、ネットを経済社会の発展につなげていくためには、実名でのネット使用を推進し、信頼性を高めることが不可欠と判断した」なんて記載は載ってないぞ。これは総務省の担当者発言なのか、それともまたそーゆー空気をネット界隈に醸成したいのか総務省または共同通信先の決定稿の引用個所読んでみろよ、ここで言ってるのはあくまで「ICTにより実現されるバーチャルな環境を、現実社会と同じ感覚で活用すること」「サイバースペース上で実名又は特定の仮名で他人と安全に交流することを自然の術として」学習するための方法として「学校の中でセキュアなネットワークを整備し」そのクローズドなネットワーク内で「実名でブログやSNSを用いて他の児童・生徒と交流する」ことなんだぞ。別に「実名でのネット使用を推進し、信頼性を高めることが不可欠と判断した」なんて読めないじゃないか。教えてくれ、どうしてそういう読みになるの? 大体「実名でのネット使用を推進」するっていうなら、決定稿に「ネット上での誹謗中傷やプライバシー侵害等に対する実地的な安全の守り方も同時並行的に学ぶことが重要」だなんて必要ないじゃないかよ(笑)。頼むからよぉ、事実と予測を混同した記事書くなよボケ。


まぁざっと必要個所読んだだけだけど、もう突っ込みどころ満載な報告書になってるよ。ブログとSNSの利用者推移なんか常識的にちょっと考えられない数値出してきてるし(ソースを見せろ一次ソースを)、書いてあることのほとんどが、今ネットで進行中のやり取りの後追いだしさ。
ちょっと眩暈がしたのは項目の2「(2)地域コミュニティのICT受容力の向上による活力強化」っていうタイトルね。これは報告書(案)では「(2)日本社会の「ICT受容力」の強化 」だったのよ。おいおい総務省、今度は国から地方・現場へ丸投げかよ(笑)。まずは丸投げした決定稿から引用。

 ICTが日常生活に深く浸透するとともに活力ある社会を形成するための有力な方策の一つは、上述のとおり初等・中等教育の段階で高度なICTリテラシー教育を行うことである。一方、既に義務教育課程を修了している大多数の 世代について同様の高度なICTリテラシーを授けるのは困難であるが、地道に啓発を続けるしかなく、そのような場をどうやって作るのかを考える必要がある。そのため、今後は地域コミュニティ単位でのICT受容力の向上とともに、それを通じた地域生活・文化の活性化に取り組む必要がある。

この部分は報告書(案)ではこうなってた。

こうした課題を克服する方策の一つは(以下先に引用した個所なので一部割愛)ための教育が必要である。一方、既に義務教育課程を修了している大多数の世代について同様の高度な ICTリテラシーを授けるのは困難であるが、地道に啓発を続けるしかなく、 例えばブログ等の簡便な情報発信・交流ツールの普及がその一助になると思われる。

地域のことなんてろくに記載されていないのに、決定稿では「そのような場をどうやって作るのかを考える必要がある」として具体的・現実的な場所を匂わせて、いきなり「そのため、今後は地域コミュニティ単位でのICT受容力の向上とともに、それを通じた地域生活・文化の活性化に取り組む必要がある」と地域が唐突に現れる。いや何故よ?
で、この文章に引き継がれるのがSNSの話である。報告書(案)では次のように続けられる。

そういった観点から今後注目されるのはSNSの動向である。ビジネス面でのSNSの将来性こそ不透明であるが、SNSは元々人と人との交流を目的としたICTネットワークであることから、地域住民の結びつきを深めることを 主目的としたSNSが各地で立ち上がれば、住民のICTリテラシー向上や地域コミュニティのICT受容力強化に結びつくと想定される。例えば2007年問 題の当事者である団塊の世代の人材を活用すること等によって、地方自治体や 自治会単位でのSNSが組成されることを大いに期待したい。

そもそもこの時点でかなり気持ちの悪い話をしている訳なんだが総務省。大体地域住民のしがらみが嫌でネットに避難してるとか、フェイス・トゥ・フェイスのしがらみを棚上げして、プレーンな状態で相手と知り合える可能性があるからこそのネットだというに、しがらみだらけの地域にSNSなんて導入してどんなメリットあるのよ。で、決定稿はこの内容を具体的に示している。

 そういった観点から(以下先の引用と同様なので一部割愛)大いに期待したい。
 また、ICTによる地域のキラーコンテンツとなるべき電子自治の活性化も大きな課題である。現状の自治体のホームページの構成・内容が分かりにくいとの指摘を受けるのは、サイトが自治体の内部部局毎に編集されていることに加え、住民の特性(女性、高齢者、児童・生徒、域外からの閲覧者等)を踏まえたデザインの視点に欠けていることも大きな要因である。

書いてることの一部頷ける個所があるとはいえだ、電子自治体(有体に云えば市町村のサイト)をキラーコンテンツというあたりのセンスを何とかして下さい(笑)。そんなもん「地域に必要な情報サイトとなるべき電子自治体」でいいじゃねーか。

自治体のホーム ページはICTによる地域活力の発現の場と捉え、内容を充実させる必要があり、自治体サイトにどのような内容を掲載して情報発信するかを判断する地域情報プロデューサーのような人材と、実際に地域コンテンツを作成する地域情報ディレクターのような人材を地域情報化の中核として配置することが望まし く、これら人材を育成する必要がある。

そんな人材どうやって育成すんだか、そんな育成のために霞が関までの研修旅費出してくれる地方自治体は稀だぞ(笑)。大体が「地域情報プロデューサー」とか「地域情報ディレクター」だとか、二流の地方広告代理店みたいな肩書き、恥ずかしくて名刺に載せられないぞオイ(笑)。

最後に地域コミュニティ同士の連携の強化にも留意する必要がある。コンテ ンツが充実し、活力に満ちた地域コミュニティは散見されるが、これら意欲あ るコミュニティ間の連携が非常に少ないのが現状である。これはコミュニティ間の交流が近隣のもの同士で行われ、地域特性に応じた連携が図られていない ためであり、今後は似た特性をもつ地域コミュニティ同士が距離を超えて連携を深め、その中でその地域に合ったベストプラクティスを学ぶことが重要である。従って、今後は特性の似た地域コミュニティをグループ化して連携強化を 図る取組を実施すべきであり、具体的には地域特性を把握するための地域デー タの解析手法の開発を進めるほか、各地域の地域情報プロデューサーや地域情報ディレクター同士の水平的な連携を強化するためのネットワークコミュニテ ィを組成する必要がある。

なんかこの構想も絵面が浮かばなくて非常に気色悪い印象しか持てないんですがね、大体最近の国の悪い傾向で、地域をひっぱりたい(管理したい)癖に提示すべき(納得させる)ビジョンはないという典型例じゃないかと思いますハイ。


まったく、お前等安くない金使って何やろうっていうんだよ国も新聞屋も。